将来、不安ですか?
この質問に「別に不安じゃない。」と心の底から言い切れる方はいったいどのくらいいるのでしょうか。
この本を読んで、僕は少しその不安が軽くなりました。
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「路上ワークの幸福論」の作者、中野陽介
その昔、「ぼくが大道芸がうまくなっていく過程をコンテンツにできないだろうか」と考えていた時期がありました。
例えば、その日の収益を余すところなく公開する。最初はもちろんゼロだけど、工夫や試行錯誤が金額に反映されるならそれは読み物としてとてもおもしろいものになるんじゃないか。そうすればぼくに対して興味を持ってくれる人が増えるんじゃないだろうか。と
しかし、そうした考えはいつの間にか風化され、それなりに大道芸が成立するようになってた頃、Twitterでその日の収入額をつぶやく人を発見。それが中野陽介さん@yosuke1006。
彼は最初路上で無料絵画というのをやっていて、そのうち有料の絵画も売るようになったらしい。
そのうち、直接会うようになり、彼のやっていることに影響を受けたりもした。
ある時、思いもよらないオファーを受けた。
中野さん
全俺が驚愕
基本時にTVのクルーやYou Tuberらしき人にカメラ向けられるとトタンに取材拒否のスタンスをとるぼくとしては悩んだ。
けど彼の路上でのスタンスに共感したこともあって取材を引き受けた。
路上でやるまでの経緯に似た部分を感じた。
これは7年前の僕のFacebookの投稿なんだけど、
時給で働いていると時間がすぎることをただただ楽しみに待っちゃうな。
「あー、あと何分だー」とか
「まだこんな時間かー」とか。
でも、そういう時間の過ごし方ってすごいもったいないって思うようになってきた。帰る時間をひたすら待つために働くのって健全じゃないし。なんて思いつつ今月後半は横浜公演の手伝いをして来月上旬は北海道公演の手伝い。
収入はゼロだけど、楽しいからやる。
今日はあぁだった、こうだったなんて言いながら日々良いもんを求めて苦しむ日々はなんて贅沢な時間なんだろう。
6月の給料日は超不安だけど、得られる貴重な時間のために今は時給というシステムに耐える
うん。
『時間が過ぎるのを待つような生活』と『時間がすぎるのを惜しむような生活』
最近、前者が多くなってきたぞ。
嫌だ、嫌だ。
ってことをつぶやいたりしたのを彼の存在から思い出した。
そうそう。彼は路上に立ち始めた頃のぼくに少し似てた。
ぼくは「予め決まった時間にみにくる人を相手に、用意しているものをみせること」よりも「お互いそれまで無関係だった人間同士が、たまたま立ち止まってみたら『いまの、面白かったね』をつくりだせること」に生きてる実感を得られるようになった。全く関わりのない赤の他人が笑ってくれてしかもお金くれるなんて「生きてる」っていう実感がすごかった。
いつの日か、「ぼくのことをすでに知ってる人の評価なんてどうでも良い。今日ぼくのことをはじめて知った人の評価こそ何より大事だ。」と思うようになった。
本人とこのことは話したことないけど、きっと共感してくれる部分だと思う。
まぁ、そんなこんなでぼくもインタビューに答えた本がいよいよ出版され、しかも献本してくれたのでお礼に感想などを書く。
将来が不安な人に贈りたい『路上ワークの幸福論 世界で出会ったしばられない働き方』
全部で3つに別れていて超ざっくりいうと
- Part1でなぜ路上なのか
- Part2で世界の路上ワーカー(筆者の造語で路上で働く人という意味)の実例を129も載せている
- Part3で実際にあなたも路上デビューしちゃいないなよ
というふうに書かれている。
路上ワークの幸福論 -Part 1
この本のPart1は、路上を主戦場としてる人にとっては当たり前でも、そうではない多くの人にとっての「路上で働く意義」のようなことを熱く語っている。
ぼくとしては「おいおい、そんなに力説されちゃぁ商売敵が増えて困っちまうぜ」と心配になるくらい熱弁されている。 まぁ、4年くらい収入0円でも路上にこだわるようなぼくみたいな人ってそんなにいないと思うけど、路上を選ぶってことは今まで絶対関われなかったクラスタの人と関われるってことが、結構楽しい。
例えば、外国人と英語でしゃべってみたいと思ってるぼくにとって路上で芸をしなければ絶対に交わらなかった会話が生まれたり、新婚旅行中のカップルに「いい思い出になりました」って言ってもらえたり、小学生くらいの子の「いやぁ、いい芸をみたなー!」っていうつぶやきにびっくりしたり。
中野さ〜ん、現場からは以上です。
路上ワークの幸福論 -Part2
続く、PART2では、世界各国で路上を職場とする人々がこれでもかと紹介されている。
それも写真付きでだ。この写真がまたおもしろい。それぞれの工夫や試行錯誤が垣間見れ、いろんな発見がある。また、いくつかの人は「週にどれくらいやるのか」「どのくらい稼ぐか」「なぜこの仕事をはじめたのか」などの割と突っ込んだ質問にも余すところなく答えてくれている。
これもまたそれぞれの信条や人生観がにじみ出ていて刺激的だった。
内容も1国だけでなく、本当に世界各国、(オーストラリアや南米、北米、北欧、アジアなど)で筆者が揺さぶられた人たちが紹介されているので、とてもバラエティに富んでいる。読んでて「へぇ〜、世界ではそんなやり方で商売してんだ!すげぇすげぇ笑」って楽しみながら読めた。
例えば、メキシコのメリダという街ではバスの中で乗客に対してお菓子を売ってるおばちゃんがいるらしい。
おそらく新幹線の車内販売のような公認な商売ではなく写真から察するにそのおばちゃんが勝手にそのバスでやってることなのだろう。日本じゃ考えられないそういう光景を想像し、ぼくは「あぁ、この人生きてるなぁ」と少し勇気をもらう。
こういう事例に対して「バスの中ではゆっくりしたいんだ」「そういう煩わしいのは排除せよ」と考える人もいる。
けれど、ぼくと同じように「いや、直接売りつけられたらいやだけど、でもおもしれーじゃん」っていう感想を抱く人にとって、絶対この本はとてもおもしろい。
いろいろなタイプの路上商人を知り尽くしていたと思ってるぼくでさえ「え?マジで?その発想はすげーよ」と感心する人たちがたくさん紹介されていた。
他に、Case101なんかは不覚にも胸があつくなって涙がでそうになった。ほんとは要約したものをこの記事で書いていたのだが、全文を読んでいただきたいのであえて消した。
路上ワークの幸福論 -Part3
うまくまとまって、これまで読んできた人の30%くらいは「俺も路上でなにかやってみようかな」と思えてくる思う。自分の生き方を見直す機会としてもちょうどよい感じ。
『路上ワークの幸福論』を読んでみて。
これを読んでていて、ぼくが旅行をする理由の一つは「知らない何かに出会うため」なんだなと発見してそのことも少し興味深かった。ぼくが旅行するのは、観光地に行って写真を撮ることが目的じゃないし、現地でしか買えないお土産買って帰ることがしたいんじゃない、うまいもん珍しいもん食べることに憧れてるわけじゃない。
「その土地で生きてる人に触れて、活気をもらうこと」がしたいのかな。と思った。
そして読了後、まるで海外に旅行したような気分につつまれた。
著者の中野さんがこういう風に言ってるのが想像できた。
世界にはこんなにも路上で自分の商売見つけてたくましく生きてる人間がいるんだぜ?今のあんたはハッピーかい?